p_world  真っ暗な闇の中を歩いていた。

 視界は元より、上下左右すら解らなくなるような、漆黒の闇の中を一人で歩いていく。

道連れは居らず、ただ一人で抜け出せない闇の中を、出口を探してさまよっていた。

 もう何時間いるのか、ひょっとしたら何日、何週間、何ヶ月、何年かもしれない。時間

の感覚さえ失うほどの間、彼は疲れた様子も見せずただ黙々と、正面とおぼし期方向へ歩

いていた。

 突如として、それまでの闇の世界が一変して純白の光の世界に変わる。

 その瞬間僅かに目を細めた彼は、その先にあるものを凝視する。

「…剣、いや、槍か…?」

 まだ針ほどの大きさにしか見えないそれは、剣にしては柄が長すぎ、槍にしては刃が長

すぎるという、なんともアンバランスなものだったが、彼は何故かそれに轢かれたように

駆け寄ると、右手でゆっくりと柄を握り締めた。

 それと同時に、世界は再び漆黒の闇に包まれる。それを認識したかどうか、という程の

僅かな間に再び純白の光に。更にそれが闇に、そうかと思うと光に、闇に、光に、闇、光

…。目まぐるしく変わる世界の中で、彼は意識を失った。

 どのくらい経っただろうか、彼は意識を取り戻すと、ゆっくりと目を開いていく。

 そこに広がっているのは、果てしなく続く森だった。

「戻って…来たのか?」

 そこが、闇に呑まれる前に自分の存在していた場所だ、と認識するのにはそれほど時間

は必要無かった。それがわかると起きあがり、体に異常が無いかを調べ、軽く動き回って

みる。

「どうやら、大丈夫らしいな。」

一通り調べ終えてから荷物を持ち上げようとして、そこに見慣れぬものが加わっているこ

とに気づく。

「夢、では無かったというのか?誰が、何の為に?」

荷物の横には光の中で見つけた武器が横たわっていた。

 それをどうするかひとしきり悩んでから、口元を僅かに歪めて軽く息を吐き出す。

「そうだな、なんにしても武器も持たない旅、よりはましか。誰のものかは知らぬが、あ

りがたく使わせてもらおう。」

剣と呼ぶか、槍と呼ぶかは道すがら考えれば良いことであった。何しろ時間は売りたく

なるほどあるのだ。決められなければ、槍剣、もしくは剣槍と呼ぶのも良い、などと考え

ながら、彼は再び旅路に着いた。

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