p_world  県立阿瑠南野高校で行われる南野祭には、他とは一風変わった名物がある。南野祭実行

委員が体育館を使い、ある出し物を開催しているのである。

 女性が好みそうな、メルヘンチック長いそうが施されており、入り口の上には「おとめ

館」と題された看板が、高々と掲げられている。

 その看板の下では、事前に校内での投票により選出された、男子の人気トップ10と、

女子の人気トップ10に選ばれた美少年、美少女たちが、時間ごとに交代で入り口の前に

並び、ファーストフード店も顔負けの笑顔で出迎える。

 中に入っていくのは、カップルが多いようだが、稀に親子連れや、男性や女性が一人で

入っていく場合もある。

 南野祭のたびに行われているので、毎年訪れ、常連となった客もいるようである。

 南野祭が行われる二日間、おとめ館だけは、毎年大盛況なのである。

 そこまで人気のあるおとめ館の中は、一体どうなっているのだろうか?

今回の南野祭で、少しだけ除いてみるとしよう。

絵本の世界の中にある、おとぎの国へ誘うかのような扉を開くと、その中は一変して暗

闇の世界となっている。

奇声を発して、自らの顔を下から照らしつつ、突然現れる生徒から明かりを受け取り先

に進むと、左右にドクロが飾り付けられた第二の門が姿をあらわす。

そこを通りぬけると、一転して白い光に包まれた世界が広がり、さまざまな仮想をした

10人ほどの生徒が、ハロウィンさながら「Trick or treat」と唱えなが

ら、両脇を通りぬけていく。その先には、やはりハロウィンでお馴染みの、ジャックラン

タンをかたどった門があり、その先は青い世界に続いている。

青い世界は、美しい南国の海中を思わせるつくりになっていた。珊瑚礁を模したオブジ

ェクトが周囲を取り囲み、時折人魚をイメージしたらしい衣装を身にまとった男女が、そ

の影から姿をのぞかせる。

次の世界への扉も珊瑚礁で出来たもので、その先は赤い世界だった。

火山帯か、マグマ、あるいは激しく燃え盛る炎を連想させるような、色の濃い赤の世界

では、炎をイメージしたであろう赤いボンボンが、裏から吹き付けられる風で揺れており、

更には火の粉と思わしき、赤い色紙を細かく千切ったものが辺りを舞っていた。

その先は炎に包まれた扉で、そこを抜けると外へと続いていた。

外では、入り口同様美少年、美少女達が待機しており、やはり入り口同様笑顔で客を送

り出していた。

以上が阿瑠南野高校文化祭名物「おとめ館」のすべてである。

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