p_world
目の前にいるのは、左手に拳銃を持った少女。感情をまったく感じさせない、ブラウン
の混じった相貌で、それとは対照的に、優しげな表情をこちらに向けている。
俺も、黙って見返してみるものの、表情は緊張で硬くなっている。
当然だ、銃を向けられて、平然としているなんて、俺には出来ない。もし、そんなヤツ
がいたら、是非とも会ってみたい。
彼女は、なにも言えないままの俺に、自愛に満ちた微笑を浮べ、引き金にかけた人差し
指を動かした。弾丸は、胸に吸い込まれ、俺の体は、一瞬で倒れて、燃えだし、数秒で骨
だけとなり、やがてそれすらも、粉となって崩れていく。
倒れた瞬間から、その様子を、何故か4メートルほど上から見ていた俺に、ドクロとな
った俺が告げている。
「お前は、人ならざる者となって、そして死んでいったのだ。」
目を開くと、そこには見慣れた天井が移っていた。
と、そこに見慣れた少女の顔が、入ってきた。
「由紀…俺、また倒れたのか?」
「そうよ、武文君と荷物を運んでいるときに、いきなり倒れたんですって。そんなに重い
荷物じゃなくて、良かったわね。後で、武文君にお礼、言っておきなさいよ。」
「ああ…。」
「学園祭が近いっていっても、翔は無理しすぎちゃいけないの、解っているでしょ?」
「ああ、気をつけるよ。」
「じゃあ、もう少しお休みなさい。放課後、迎えに来るわ。」
あいまいな変事をした俺に、半ば呆れた様にそう言い残して、由紀は保健室を後にした。
静寂を取り戻した、保健室の天井を眺めながら考える。
俺、佐藤翔は、幼い頃から体が弱いらしく、普段の生活でも、何の原因も無く突然、倒
れるのは日常茶飯事だった。
そんなときは、決まってあの夢を見ている。拳銃を俺に向けて、優しく微笑む少女。彼
女は、何故あんな風に微笑んでいるのか。そして、何故拳銃で俺を撃つのか。
考えているうちに、俺は再び深い眠りへと落ちていった。
私は、左手に拳銃を握っている。目の前にいる少年に、銃口を向けて、感情の無い瞳で、
彼を見ている。
左手は、私の意思と関係無く、握った銃口を彼に向けている。
脅えている彼を、安心させようと、表情を崩してみるが、表情だけで、瞳には相変わら
ず感情が無いのが、自分でもわかる。それでも、必死で表情を崩しつづけるけれど、結果
は変わらない。
そうしているうちに、やがて引き金にかけた人差し指が、勝手に動き出し、鋭い光を放
って、弾丸が打ち出され、彼の胸に飛びこんでいく。
弾丸を受けた彼は、一瞬で倒れて、燃えだし、数秒で骨だけとなり、やがてそれすらも、
粉となって崩れていった。
それを、呆然と見ている私に、ドクロとなった彼が告げる。
「オマエは俺を殺した罪を背負え。」
夜、ベッドに体を預けて、昨日見た夢を思い返してみる。
私、水口由紀がその夢を見た翌日は、必ず翔が倒れる。理由はわからないけど、何故か
その夢を見た翌日には、決まって彼が倒れた。それも、一度や二度ではない。
彼とは、小学校に上がる前からの幼馴染で、小学校にあがる頃は、あの夢を見るように
なっていた。
原因はわからない。夢を見た翌日、彼に忠告しようにも、根拠が夢ではうまく説明でき
無いし、信じるとは思えない。
夢の中の自分を、じっくりと思い出してみる。
もう、何度もやったことを、更にもう一度繰り返して、新しい発見が無いか考えてみる。
夢の中の私は、左手に拳銃を握った乙女。左手は、言う事を聞かない。思い出してみる
と、それは左手だけではなかった。左手を制し様としている右手も、向きを変えようとし
ている足も、とにかく体全体が、私の意思とは無関係に動いていた。
結局、新しい発見は何も無いまま、夢は最後のシーンにたどり着いた。
諦めきれずに、何度も同じ事を繰り返す。
夢の中の私は、拳銃を持った乙女…。
またダメ、もう一度…。夢の中の私…。もう一度…。…を持った…。もう一度…。ゆめ
の…もったおとめ…。
繰り返しているうちに、私はいつのまにか眠っていた。
目の前にいるのは、左手に拳銃を持った少女。感情をまったく感じさせない、ブラウン
の混じった相貌で、それとは対照的に、優しげな表情をこちらに向けている。
私は、左手に拳銃を握っている。目の前にいる少年に、銃口を向けて、感情の無い瞳で、
彼を見ている。
俺も、黙って見返してみるものの、表情は緊張で硬くなっている。
左手は、私の意思と関係無く、握った銃口を彼に向けている。
当然だ、銃を向けられて、平然としているなんて、俺には出来ない。もし、そんなヤツ
がいたら、是非とも会ってみたい。
脅えている彼を、安心させようと、表情を崩してみるが、表情だけで、瞳には相変わら
ず感情が無いのが、自分でもわかる。それでも、必死で表情を崩しつづけるけれど、結果
は変わらない。
彼女は、なにも言えないままの俺に、自愛に満ちた微笑を浮べ、引き金にかけた人差し
指を動かした。弾丸は、胸に吸い込まれ、俺の体は、一瞬で倒れて、燃えだし、数秒で骨
だけとなり、やがてそれすらも、粉となって崩れていく。
そうしているうちに、やがて引き金にかけた人差し指が、勝手に動き出し、鋭い光を放
って、弾丸が打ち出され、彼の胸に飛びこんでいき、弾丸を受けた彼は、一瞬で倒れて、
燃えだし、数秒で骨だけとなり、やがてそれすらも、粉となって崩れていった。
倒れた瞬間から、その様子を、何故か4メートルほど上から見ていた俺に、ドクロとな
った俺が告げている。
それを、呆然と見ている私に、ドクロとなった彼が告げる。
「お前は、人ならざる者となって、そして死んでいったのだ。」
「オマエは俺を殺した罪を背負え。」
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