Ray Hazardz
郊外にある高級住宅街の中にあるうちの一軒。
部屋では1人の男がソファに座ってテレビの画面を見つめていた。
その画面に映っているものは某国で起きている戦争の状況を知らせるもの。
政府軍とそれに対抗する反政府ゲリラとの戦闘の様子がはっきりと映し出されていた。
男はそれを見ながら笑っていた。
「全く、戦争というのは本当に金になる。ちょっと煽るだけで武器が跳ぶように売れるん
だからなぁ。」
「へぇ…今回は一体どのくらい稼いだのかな?」
「だ、誰だ!?」
誰もいない部屋での独り言だったはずなのに突然相槌を打たれた男は驚いて部屋の中を見
回すが、周りには誰かいるような気配が無い。
そしてそれを見透かしたように再び声がする。
「何処見てんだよ。こっちだよ、こっち。」
「誰だ、何処にいる!?」
何処からか解らない声に恐怖を覚えながらも虚勢を張るように声を張り上げる。
「だからここだって。」
それに答えるように声の主は扉から姿をあらわした。
扉から出てきたのは白いワイシャツに黒のスラックスという格好の上に黒のコートを纏っ
た男だった。
彼は男の問いかけに答えるように話し掛けた。
「だからここだっていってるだろ。広川康介さん。」
「な…な…。」
突然自分の名前を呼ばれて声が出ない広川に男はさらに言葉を続ける。
「何驚いてんだよ。広川電気の社長ともあろう人なんだから名前くらい知られてて当然だ
ろ?あ、ちなみに警備員は全員ガスで眠らせてるから呼んでも無駄だぜ。」
コートのポケットから黒いドライバーグローブをはめた両手をゆっくりと出しながら、涼
しい表情で何事もない様にいう。
男はたじろぐ広川に冷笑を浮かべながらさらに言葉を続ける。
「広川電気って言えば日本で五指に入るほどの家電メーカー。…てのは表向きの話で裏じ
ゃ電子兵器の販売を手がけてる、なんて話は内緒だったか?」
その話を聞いているうちに広川の顔は青ざめていき、手は拳を握った状態で震え始める。
「あ…俺の名前が気になるかい?俺は美千夜ってんだ。」
その名を聞いた広川が僅かに動いた瞬間、美千夜が鋭い声を放った。
「動くな!」
その声に広川は美千夜のほうへ向き直る。
美千夜は彼に銃口を向けながら話を続けた。
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