Ray Hazardz
「ま、そんなのは大した事じゃない。裏で兵器売ってる連中なんて、この国にだって両手
じゃ数え切れないほどいる訳だし。だが…。」
そこまで言うと美千夜は引き金を引いた。
サイレンサーがついていない銃口から、音も光も無く放たれた銃弾が広川の眉間に一発。
それだけでことは済んだ。
広川が倒れ、美千夜は中断した言葉を続ける。
「…あんたはやりすぎた。兵器を売っても戦争を煽るようなことはしない、って死の商人
の暗黙の了解を侵したんだよ。」
鬱陶しそうにそういうと最後に一言呟くように口を開く。
「バッドエンドだ…。」
彼は現れたとき同様音も無くその場から消えていった。
物音一つ無い広川邸から先ほど広川暗殺をやってのけたばかりの美千夜が塀を飛び越え
て脱出してきた。
2メートル程の壁を楽々飛び越え音も立てずに文字通り鳥のようにフワリと着地する。
彼はそのまま煙草を加えると、PEを取り出しどこかへ電話をかけた。
「はい、バビロンメディア社長室です。」
電話の向こうで女性の声がする。
社長室といっているのでおそらく秘書だろう。
彼は応答から一呼吸置いて話をはじめた。
「美千夜って者だけど芳賀社長に繋いでもらえる?」
「社長は現在会議中ですが…。」
「あ、そう。じゃあ、例の件は解決しましたって伝言してもらえる?」
「かしこまりました。そのようにお伝えいたします。」
秘書の言葉を途中で遮った彼はそういうと秘書の了解を待って電話を切ると、そのまま高
級住宅街に消えていった。
夕方、自宅に戻った美千夜は買ってきた缶ビールを空けるとテレビをつけた。
映った画面には先ほど彼がやってきた広川殺しのニュースが流れていた。
ただし、現実とは違う点が一つ。
彼は「殺された」のではなく「自殺した」ということになっていた。
それを見た美千夜は軽く舌打ちをした後毒を吐く。
「チッ、依頼主は国家権力かよ…芳賀さんが依頼主を隠したがるわけだ。」
いいながら手にしたビールを一口飲んだところで手元においてあるPEが電話の着信を告
げる。
電話の相手が芳賀千早となっているのを確認してから電話を取る。
「はい、美千夜です。」
「美千夜か、ご苦労だったな。」
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