Hello World from Deep Diver

 その全てが終わった翌日、Blue Angelに4人が集合していた。

「結局、依頼主はマスコミ関係者ってワケか。」

 健と彩、二人の仮説を聞き終えた智哉が、納得したように頷きながら話す。

それに、疑問を投げかけたのは、渚だった。彼女は、明らかに不信感を抱いて、話し始め

た。

「けど、それっておかしくないかしら?マスコミ関係なら、せっかくのスクープを、独占

しようとするのじゃないかしら?けれど、今回はあらゆるメディアが、同時にその記事を

発表している。これって、矛盾しない?」

黙って聞いていた健が、それを聞いて満足げに微笑んで、口元を少し歪ませて笑う。それ

に続いて、彩も同じような表情で、話し始めた。

「いいところに、気付いたわね。確かに、その通りよ。今回のことは、マスコミ発表が最

初だったから、依頼主はマスコミのように思えるわね。けれど、全てのマスコミが同時に

発表している。渚が言ったように、明らかにおかしいわ。」

「別におかしくないだろ?マスコミ各社が、共同で依頼してきた可能性も、あるわけだし。」

「それは、無理がある。この国に、マスコミがどれだけあるか、解ったものじゃないし、

フリーだって、何人もいる。その全てが同時に、って言うのは、無理だと思わないか?仮

に、フリーの奴が、依頼人だったとしても、懇意にしているところに、持って行くだろう

し。」

智哉の仮説は、横から口を挟んだ健によって、いとも簡単に、しかも他の可能性のおま

けまでついて、否定されてしまった。

恨めしそうに、健を睨む智也と、既に興味を失っている健を、交互に見てから、彩が続

きを話し始めた。

「話を続けるわよ。以上の状況から推測すると、依頼主は株主、という可能性が高いわね。

この間の一件で、確信をもった依頼主が、全てのマスコミと、同時にリークした。という

のが、順当な考え方じゃないかしら?」

智哉というよりは、健に向けて最後の疑問を投げかける。智也も、一応納得したという、

表情を見せている。しかし、それ以上に、健の表情は、不適で愉快そうに歪んでいた。

それは、彩の仮説すら嘲笑うように、いや、それすら興味がないように見える。彼は、

全員を一瞥し、微笑んでから、立ち上がった。

「じゃあ、俺はちょっとやることがあるから、先に帰るな。報酬は、天川さんから、貰っ

ておいてくれ。全員、別に分けてもらってあるから。」

「あ、ああ…。」

智也が曖昧な返事をすると、彼は、支払いは済ませておくから、と言い残して、店から

出て行った。

 入れ替わるように、店主である麗香が彼らのテーブルに、やってくる。

「彼は彼で、色々忙しいみたいなのよねぇ。この仕事以外に、やる事でもあるのかしら。」

「他に、やること…。」

彼女の言葉に、反応するように、彩が呟く。麗香自信は、そんなことは気にもかけずに、

三人に話し掛けた。

「ところで、新しい仕事の依頼が、いくつか来ているのだけど、どうする?小暮君からは、

一応全部了解受けているから、後は貴方達が、どの依頼を受けるか決めて良いそうよ。」

「もう、そんなに依頼がきているのですか?」

「ちょっと、早すぎませんか?」

 智也と渚が、口々に驚きの声を上げると、彼女は悪戯っぽく微笑んでから、事情の説明

をはじめた。

「知らなかったの?井筒金属の一件が始まる前、小暮君がちょっとした、営業活動をして

いたのよ。」

「営業活動?」

「って、どんなことをしたのですか?」

智也の言葉を、渚が引き継ぐ。

 それを見て、楽しそうに、口を開いた麗香より早く、彩が続きを説明した。

「この国の、主要な企業のサーバーに、ハッキングを仕掛けて、メッセージを残してきた

そうよ。しかも、相手が気付かなくても、井筒金属の一件が終わったら、自動でメッセー

ジが表示されるように、仕掛までして。」

「しかも、メッセージは警告分の形式で表示されて、それを閉じると、自動的に消去され

る設定まで、していたらしいわ。」

 麗香が引き継いだ、最後の説明が終わるのを待って、再び二人が質問をした。

「メッセージって、どんな?」

麗香は微笑み、彩はやや不満そうな表情で、同時に答える。

「それは…。」

"Hello World from Deep Diver..."

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