闇街忌憚

それから三週間後の夜、時間も場所も三週間前と同じ状況で四人は再び出会った。

「こっちは約束どおり引退したんだ、今度はそっちが約束を守る番だぞ。」

「いきなり用件だけ済まそうってかなりせっかちですねぇ…。せっかくなんですからちょっと

話そうとか思いません?」

対峙した状態から開口一番用件を切り出す雄哉に対してあくまでのんびりいこうとする和

真。

それに利樹が穏便に切り替えす。

「君らと話してるほど暇でもないんでね。職探ししないといけないし。」

そういわれた和真はやれやれといった表情で持っていた袋を差し出した。

「はい、これがテープです。あ、ダビングとかはしてないから大丈夫ですよ。」

雄哉が和真からそのテープを受け取った瞬間、シャッターを切る音と共にフラッシュが焚

かれた。

その場にいた全員が光のした方を見ると、そこにはカメラを大事そうに抱えながら走り去

っていく男の影があった。

雄哉たちは動揺したが和真たちは意外と冷静だった。

「小雪。」

和真は笑みを浮かべながらのんびり小雪を呼び、小雪も同様に微笑しながら札を取り出し

て男に向かって投げる。

それは人の形へ変化すると驚異的な速度で男を捕らえ戻ってきた。

「ご苦労様、いづな。」

小雪がいい、人型の肩を軽くたたくとそれは元の札に戻っていった。

「さてと…お宅が何でここにいるかなんてことは聞かないけど、とりあえずフィルムを渡

してもらおうかな?」

和真が笑みを崩さず言うと、男はカメラからフィルムを取り出し、震える手で和真に渡し

た。

「はいどうも。今日はこれで返って良いけど、もしこのことを記事にしたら…どうなるか

解るよね?」

男は顔を恐怖に染め何度も頷くと、逃げるようにその場を去っていった。

和真はそれを見届けてから雄哉たちの方へ笑みを向けてやった。

 天海利哉引退のニュースは大学でも大きな話題を呼んだ。

引退直前に彼をゲストに迎えた肝試しツアーがあったことや、和真たちがそれに参加して

いたこともあって、和真や小雪が関係しているのではないかという憶測も噂として流れて

いたが、半月もするとすっかり消えてしまっていた。

それから一年後…。

例によって授業を抜け出し、食堂で昼食を食べていた和真のところにいつものメンバーが

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