闇街忌憚

集まってきた。

「よぉ綾瀬。また授業サボってんな。」

「人聞きの悪いこと言うなよ。ちゃんと出席はとったぞ、授業は聞いてないけど。」

「広く世間ではそれをサボリって言うのよ。」

「せめて自主休講って言って欲しいね。」

和真が不服そうに言い返したのと同時に一人が遅れてやってきた。

「よぉ綾瀬。」

それにその場にいた全員が軽く手を揚げて返すのをみて彼は早速話題を切り出した。

「なあ綾瀬、天海利哉って覚えてるか?」

その問いかけに、和真は少し考えてから思い出したように頷いた。

「ああ…あいつか。で、その天海さんがどうした?」

彼はそれを聞いて待ってましたとばかりに嬉しそうな声で話し始めた。

「出てるんだよ。今テレビに。」

「はぁ?」

その場にいた全員がその声と共に怪訝な顔つきでテレビのほうへ顔を向ける。

見るとそこには確かに天海利哉の顔が映っていた。

…が、よく見るとその右下に『一年前の有名人。霊能力者天海利哉のその後』といった文

字が入っており、彼は普通の姿で現在の生活について語っているだけだった。

「…ですが今では全く普通の生活をしています。これからもごく普通に暮らしていきます

よ。」

和真はそれを見ながら微笑み、呟いた。

「しっかし…人ってのは変わろうと思えばこうも変われるもんなんだねぇ…。」

和真は残っていた昼食を再び食べ始めたが、それが小雪に聞こえたらしい。

「何一人ですましてんのよ!」

言いながら腕で和真の首を締め付ける小雪。

「うぐっ…ちょ、飯食えないって!放せ小雪!」

和真が慌てて振りほどこうとするが小雪は放さない。

「あの人約束破ったのよ。何とかしなきゃダメじゃない!」

そういって和真を解放する。

「落ち着けって、一回くらい別にいいだろ?本人も『普通に暮らす』っていってるんだか

ら大丈夫だって。」

小雪は咳き込みながら答える彼になおも詰め寄る。

「それじゃダメよ、絶対にでるなって言う意味もこめてもう一度いっておかないと…。」

「いおうにもテープはもう無い。」

その言葉を聞いた小雪が一瞬固まる。

「本当に無いの?」

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