闇街忌憚

「オカルト研究会のメンバーから聞いてるよ。君と水沢さんは大学で有数の霊能者なんだ

って?」

「一応…そういうことらしいですね。」

相変わらずとぼけた表情で答える和真をしげしげと見つめながら利哉が言葉を繋ぐ。

「ふぅ…ん。確かにそれなりに力はあるらしいね。」

「それはどうも。」

「だけど、余り手を出さないほうがいいな。素人が迂闊に手を出すと痛い目を見るよ。」

「はぁ…。」

「これまでは運がよかっただけだろう。今後、こういうことは止めることをお勧めするよ。」

「どうも…。」

終始とぼけた表情の和真を残し、自身たっぷりといった感じの笑みを残して俊哉は去って

行った。

「何あれ、いくら有名人だからってちょっとむかつかない?」

「そうだな。ちょっといいすぎかな?」

「ああいう有名人って、結構話ばかりの人が多いじゃない?今度もそういう奴じゃない?」

「そのあたりどうなんよ、綾瀬。」

「さあ…あれだけやってるんだから本物なんじゃない?」

周りで聞いていた和真の食堂の友人たちが口々に言うが、和真は全く気にせずとぼけたま

ま答える。

「さあ…って、お前が言われたことなんだからちょっとは何か言い返せよ。」

「まあ、言われたものはしょうがないからね。言われた本人が全く気にしてないんだから

別にいいんじゃない?」

「和真君には何を言っても無理よ。周りのことを気にしない性格だから。」

ツッコミを入れられた和真を弁護するように小雪が助け舟を出すが、その為今度は小雪に

矛先が向く。

「そういえば水沢、お前はどうなんだよ?」

「そういえば、小雪のことも言われてたよね。」

「どうっていわれても…私も別に気にしてないわよ。そんなことでいちいち腹を立てたっ

てしょうがないことでしょ?」

「そーいうこと、いちいち気にしてたら時間がいくらあっても足りないって。」

小雪の言葉に和真も同調する。

「でも、何かやる気なんでしょ、和真君?」

「さあ…て。どうでしょう?」

友人たちが先に行った後小雪がした質問に、和真は少し微笑しながら答えた。

 『肝試しツアー』は見事なまでに何も起こらず進んでいった。

当然、主催者側としても一部の参加者としても面白くない。

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