闇街忌憚
そしてそういう者達がとる行動というのは大体決まっている。
参加者たちは主催者に文句を言い始め、対処に困った主催者はゲストへと泣きつく。
ゲストである天海利哉自身はその実力に関わらず何事もなく終わることを望んでいた。
しかし、主催者に言われてしまった以上、嫌でも盛り上げなければならないというのはこ
ういうときのゲストの宿命である。
仕方なしに彼は適当なポイントを見つけては、参加者たちの恐怖を焚きつけるようなこと
をいい始める。
参加者たちはメディアで活躍中の有名霊能者がようやく本領を発揮したと喜ぶ者もいれば、
恐怖を焚きつけられてより恐がる者もいた。
「ふぅ…。」
何回目かの発言の後、彼は小さく息を吐いた。
「少し辛そうですね。」
不意に後ろから声をかけられ、振り向くと最後尾にいたはずの和真たちがいつのまにか自
分がいるほぼ中心の位置に来ていた。
「やあ、ずいぶん前に出てきたね。」
利哉は一瞬まずいところを見られたと思ったが、そこはメディアに登場し、人前に出る場
数を踏んでいるだけにすぐ表情を笑顔に変え、話し掛けるあたりは流石であるといえる。
「あなたが急に焚きつけるものだから真ん中と後ろがそっくり入れ替わったんですよ。」
「そうなんだ…でも、僕はちゃんと見えたそのままをってるだけだからね。言ったことに
嘘偽りはないし焚きつけたつもりもないよ。」
「それならいいですけど…むやみに見えるのはやっぱり疲れますか?」
「まあ、好きで見てるわけじゃないからね。気疲れするときがあるもの否定はしないよ。」
「そうですか、それは大変ですね。」
「君は大丈夫かい?少しなりとも霊能力があるんだろう?」
「ええ…まあ何とか…。」
利哉に質問を返された和真は曖昧に答えた。
利哉は一言「羨ましいな。」といって、その場を後にした。
ツアーは半分を経過し、利哉の焚きつけはあるものの大事は起こらず淡々と進んでいく。
「で、どうするの和真君?」
「何が?」
「このまま終わらせる気はないんでしょ?」
「さて、どうだかねぇ…。ひょっとしたら俺より先に小雪のほうがやるかもしれないし。」
そんな二人の不吉な会話を残してツアーは更に進んでいく…。
それまで平穏無事に進んでいたツアーが一転して修羅場と化したのは、ある草原に来た
ときだった。
そこは戦国時代の古戦場らしく、それからおよそ四百年が経過した今でも甲冑を身に纏った
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