闇街忌憚

「今日はどうもありがとうございました。」

参加者と共に帰ろうとしていた利哉にオカルト研究会のメンバーが礼を言いにやってきた。

「こちらこそ。いい経験になったよ。とりあえず現れたのだけは祓っておいたけど、もう

現れないと決まったわけじゃないからあそこには行かないほうがいい。」

そういわれたメンバーたちはもう一度、深々と頭を下げてからその場を立ち去っていった。

「さてと…。」

彼はメンバーたちと別れると、参加者たちのほうへ目をやった。

和真たちを探しての行動だった。

そして和真を見つけると即座に近づき、声をかける。

「やあ、今日は大変だったね。」

笑いながら近づいてくる利哉に和真も笑みを返し無言で持っていたハンディカムを見せる。

「それは…。」

―――なんだい?―――聞くよりも早く和真が答える。

「今日のビデオですよ。友達が取ってたんですけどよかったらいっしょに見ませんか?」

面白そうだ、利哉はただ単純にそう思った。

普段、自分で見るのは出演した番組の編集後の映像だけだ。

実際に除霊などをやっている最中の映像など見てもつまらない。

なにしろ、実際に霊が映っていることなど無いのだから…。

否、仮に映っていたとしても本当は霊能力など皆無である彼に見えるはずは無いのである。

そんなわけで彼は今まで編集された物しか見てなかった。

ついでに言うとこういったイベントにも今まで参加してきたが、写真はあってもビデオと

いうのは初めてのことだった。

素人が取った映像とはどういうものなのか?

利哉はそれに純粋に興味を持ち、面白そうだと思ったのであったが…。

「これは…。」

ビデオに取り付けられた液晶画面を覗き込んだ利哉は驚愕の声をあげるしかなかった。

誰も知らないはずの利樹との会話…その様子が全て映し出されていたのである。

「面白いでしょう?誰も知らない海藤雄哉と天城利樹の密会場面ですよ。」

和真の言葉を聞いて利哉は…いや、海藤雄哉は更に驚愕した。

自分達しか知らない秘密を目の前のこの男は知っている…。

その目の前の男…和真は雄哉を見ながら悪意に満ちた笑みを浮かべていた。

 天海利哉こと海藤雄哉は恐怖していた。

己の目の前にいる人物、綾瀬和真は自分とそのパートナーである天城利樹の密会の瞬間を

ビデオに撮られただけでなく、自分達の本名をも知っていたいのだ。

「そろそろ帰ろうよ和真君。」

不意に自分と和真以外の声がして我に返ると、二人の周りにはツアー中和真と行動を共に

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