闇街忌憚
「こっちの要求は簡単ですよ、早ければ帰ってすぐにでも終わらせることが出来る内容で
す。」
その言葉に今度は雄哉が早口で言い返す。
「一体何なんだ?」
それを見て和真は微笑むとゆっくり話し始めた。
「要求することはただ一つ…天海利哉の引退です。」
そういって和真は今度は完全に笑みを浮かべ、二人の反応を見守った。
「引退…だと?」
「そう、つまり天海利哉は引退して、以後除霊や芸能活動といった一切の活動を二度と行
わない、ということですよ。」
昼間とは優劣が逆転した、という印象を受けるような微笑をみせながら和真が続ける。
「その理由などはお任せします。どんな理由でも良いので以後全ての活動を休止してくだ
さい。」
まず浮かんできた疑問に和真が答え、小雪が補足する。
「もしその要求を呑んだとして、肝心のテープはどうするんだ?」
その疑問にも和真は簡単に答えて見せた。
まあ、その手の質問がされるくらい仕掛けた側ならば簡単に予想できるのだろうが。
「その点も心配無いですよ。あなたが引退するとしたらそれをマスコミに発表しなければ
ならない。テープはその発表の後…三週間くらいたってからこの時間にこの場所でお渡し
します。勿論、こちらはテープのダビングなどは一切しないと約束します。」
和真はそこで一息つき、二人の表情を見てから更に続けた。
「どうです?永遠と金を強請とられることに比べれば、遥かに簡単な要求ではないでしょ
う?もし、引退後についた仕事でそっくりだといわれても『よく言われます』の一言で済
みますし、それも少しの間ですから。」
そこまで言われてはおとなしく引き下がるしかないかもしれない。
実際、利樹はそう思った。
しかし、雄哉は違った、その言葉を聞いた後で微笑んで見せると一言言い放った。
「どんな要求にしろ…簡単に呑むと思ったのかい?」
雄哉はそういって指を鳴らす。
それに呼応するように周りの草原からヤクザ風の男達が10人ほど現れた。
「どうする?今すぐテープの在処を教えるか…それとも、痛い目にあってから教えるか
…どっちだい?」
雄哉がその表情にたっぷりの余裕を見せて尋ねる。
それに対して和真は少し考えるような表情で小雪に聞いた。
「うーん…どうしようか小雪?」
「決まってるじゃない、選択肢はこの方達にはご退場いただいて強引に要求を呑んでもら
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