木漏れ日の目覚め
もらったプレゼント、最後だと思って祐一に別れを告げたこと、奇跡的に回復し祐一と再
び会えたときのこと…。
それを思いだしながら祐一と始めてあった場所を通る。
(そういえば始めてあったときはいきなり上から雪が降ってきたんだっけ。)
始めてあったときのことを思い出しながらこの道を通る。
(確か、あゆさんが木にぶつかって…。)
それを思い出したときだった。
突然、誰もいなかった場所に彼女が姿を見せた。
一年前の冬と変わらず羽のついたリュックを背負った彼女は一年前と変わらぬ姿のまま栞
の前に姿をあらわした。
「あゆ…さん?」
彼女はその問いかけに答えずただ黙って微笑みながら栞を見ていた。
「あゆさん?」
栞がもう一度話し掛けると彼女は突如背を向け、走り去ってしまった。
「あゆと会った?」
翌朝、昨日栞が体験したことを祐一に話した後彼の口から最初に出てきた言葉がそれだっ
た。
「そうなんです。」
そういって栞はあゆとの再会の様子を細かく説明した。
「笑ってただけで何も言わずにどこかへいった?」
「あゆちゃんなら栞ちゃんと会って何もいわないはず無いのに?」
話を聞き終えた祐一と名雪がした質問に栞は頷いて答えた。
「そんなことってあるのかな?」
「あゆだったらすぐに栞に飛びつくはずなんだけどな。」
「飛びつくのはともかく、普段ならあゆさんから声をかけてくれるはずなんですけど…。」
そういって考え込む三人に事情を知らない香里が質問をする。
「…そのあゆって誰なの?」
祐一たちはあゆの事を知らない香里にあゆのことを簡単に説明した。
「そう…でもそれならどうして栞に会いにきたのかしら?普通に考えれば相沢君に会いに
来るはずでしょ?」
「そうなんだよな…。」
祐一は、香里の言葉に答えながらあゆと最後にあったと気のことを思い出した。
「探し物が見つかった」といった彼女は同時に「もうここへはこれない」とも言っていた。
そして最後に哀しげな微笑を浮かべながらの言葉。
「…ばいばい、祐一君。」
そういって走り去った彼女の表情は、もう二度と会えないということを伝えたかったのか
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