木漏れ日の目覚め
もしれないと祐一は何と無く悟っていた。
しかし、彼女は再びこの街に現れた。
祐一ではなくその恋人、栞に前に…。
「でも、栞ちゃんがあゆちゃんに会ったんなら祐一も会えるかもしれないよ。」
名雪の言葉に祐一はある決意をする。
「よし、じゃあ今日の午後は商店街を探してみるか。」
その言葉を聴いた名雪は楽しそうに言った。
「私も手伝います。」
あゆのことを香里に説明している間ずっと俯いたまま黙っていた栞が突然顔を上げると言
った。
「栞…。」
その言葉に祐一は彼女の名を静かに呼んだ後一瞬考え、また話し始めた。
「解った、お前にも協力してもらうよ。正し、学校が終わったあとでな。」
「そうだよ、それまでは私と香里が手伝うから。」
「大体あんたは人の倍頑張らなきゃいけないのよ。私も手伝ってあげるから無理しちゃだ
めよ。」
その三人の言葉に栞は嬉しそうに微笑むと素直に頷いた。
午後、祐一たちはあゆを探す為に久しぶりで商店街を訪れた。
「俺は昨日栞があゆと会った辺りを探すから2人は他を頼む。」
「じゃあ、私はあゆちゃんが行きそうなところに行ってみるよ。」
「私はその娘を知らないから適当に歩き回ってみるわ。」
祐一の指示にそれぞれが答える。
「じゃあ3時半にここだから間違えるなよ。」
予め決めておいた時間と場所を確認するように言うと祐一は商店街の中に消えていった。
「じゃあ私たちも。」
「そうね、ここにいても仕方がないものね。」
2人はそういってそれぞれ違う方向に消えていった。
名雪が最初に訪れたのは祐一に聞いたタイヤキ屋だった。
タイヤキが好きなあゆならきっとここにタイヤキを買いに来てると思い屋台のおじさん聞
いてみた。
おじさんはあゆのことは覚えていたが今年は一回も来ていないと答えた。
その後、その周辺でタイヤキを売っている場所を知っている限り探し回ったが、結局彼女
は見つからなかった。
それでも、どこかにいないかと時間ギリギリまで探してみたが、結局見つからず一旦集合
場所まで引き返そうとしたそのとき、彼女が目の前に立っているのに気付いた。
彼女は栞のときと同じように一年前と同じ衣装に身をつつみ、名雪に向って微笑んでいた。
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