木漏れ日の目覚め
祐一がそういうと名雪と香里がそれぞれ頷き、三人はそれぞれ別の方向に消えた。
捜索範囲は昨日と同じ、祐一は栞が出会った場所、名雪は昨日であった場所を中心にあゆ
が行きそうなところ、香里は商店街を当ても無く歩き回る。
しかし、最初の休憩までの時間彼女を見つけることは出来ず、一旦集合、休憩した後栞も
加わり捜索を再開した。
休憩後はそれぞれ四方に分かれての捜索となる。
その方が広範囲を捜索できるし個人が受け持つ範囲はそれほど広くならないからである。
香里は商店街の北側を探していた。
「やっぱりちょっと無謀だったかしら?」
捜索を開始してまだ2日目かだというのに顔も知らない少女を探すことへの辛さからか、
小さく弱音を吐く。
「せめて写真くらいは欲しかったなぁ…。」
一発でわかる特徴があるとはいえ、やはり顔がわからないというのは人を探す上で致命的
だ。
彼女がそう愚痴った時だった。
目の前にいる少女に気がついた。
話で聴いた羽根突きのリュックを背負い赤いヘアバンドをした少女。
「あなたが…月宮あゆ?」
おそらくはそうだろうという確信をもってその名を呼んだが、彼女は頷きもせずに微笑み
ながらじっと香里のことを見つめていた。
「そうなんでしょ?ねぇ…何故何もいわないの?」
立て続けに二つ質問を浴びせるが彼女はそれに答えない。
答えないどころか微笑を崩さずに後ろを向くとそのまま走り去ってしまった。
「ちょっと待ちなさいよ!」
そう叫びながら彼女の後を追いかけるがどうしても追いつくことが出来ない。
それどころかぐんぐん差が開きあっという間に見えなくなってしまった。
彼女が去っていった方を見つめながら呟く。
「私はあなたを連れて行かなきゃならないのよ…栞と相沢君のために…名雪のために…。」
言ってみたところで彼女が戻ってくるはずも無く、肩を落して夕暮れの商店街を集合場所
に向った。
「それ、あゆちゃんで間違いないと思うよ。」
集合場所に先に到着していた名雪から返ってきた言葉は予想通りのものだった。
「そう…ゴメン、名雪。」
その言葉を聞いた香里はさらに肩を落す。
「でも、すごいよ香里。いくら栞ちゃんたちのためでもそこまでできる人なんでそんなに
いないよ。」
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