木漏れ日の目覚め

「…それだけじゃないの。名雪のためでもあるの。」

「え?」

なんとか慰めようと言葉をかけた名雪は香里の答えを聞いて一瞬凍りつく。

「あゆちゃんを探すことが私のため?」

香里は困惑する名雪をじっと見つめ静かに説明をはじめた。

「名雪…あなた相沢君のこと好きだったんでしょ?いいえ、今だって思いは捨てきれてな

いはずよ。それなのに名雪は2人を祝福してくれた。私は名雪の親友として以上に栞の姉

としてそのお礼がしたいの。」

名雪は涙ながらにいう香里をそっと抱きしめながら答える。

「それでも香里は偉いよ。そんなこと思えても実行できる人なんて多分…ううん、きっと

少ないよ。でも香里は実行してる。それだけで充分偉いし、私はそれで…香里がそういっ

てくれただけで満足だよ。」

いいながら頭をそっとなでる名雪に香里は心から感謝し、彼女の名雪への感謝の念はより

いっそう深くなるのだった。

 その後、時間よりやや送れて戻ってきた祐一と栞にも香里とあゆが会ったことを話たが、

2人はあゆの影すら見ることが無かったらしく、それでも香里があゆとであったという収穫

を残して2日目の捜索は終わった。

 捜索開始から三日目…この日は土曜日で午前授業だったので、授業終了後すぐに四人で

の捜索が開始された。

昨日の後半同様、それぞれ四方に分かれて捜索したがあゆを発見することは出来ず、その

日は落胆と共に終わるはずだった。

 「今日は誰もあゆちゃんに会わなかったね。」

帰り道、祐一の横を歩く名雪が呟いた。

「そうだな…でも毎日来てる訳じゃないかもしれないからな。明日は日曜だから1日探し

ていられるからひょっとしたら見つかるかもしれないぞ。」

「祐一さん…。」

名雪の言葉に相槌を打ったところで、不意に後ろから声をかけられる。

2人が振り返ってみるとそこには珍しく(といってはなんだが)真剣な顔をした秋子がいた。

「あ、秋子さん。買い物の帰りですか?」

「ええ…。祐一さん…実はあなたにお話があります。」

「俺に…ですか?」

「そうです。ですけど…それは夕飯を食べてからにしましょう。」

そういったとき、秋子は普段と同じやさしい微笑をしていた。

 夕食後、秋子は名雪を部屋に追いやり祐一の向かいに座ると、それを待っていたかの要

に祐一が話を切り出した。

「秋子さん、一体どんな話なんですか?」

前項へ

次項へ

小説TOPへ