Ray Hazardz

だけです。」

笑みを崩さず答えながら一枚の紙を差し出す彼に、美千夜は嫌気がさしたようにいう。

「て、ことは何か?芳賀さんはやっぱり最初からこうするつもりだったって訳か?」

「みたいですね。もっとも、彼女がさらわれることは予想してなかったでしょうけど。」

「どっちも対してかわらねえよ。お前が近くにいたってことは当然…。」

「はい、連中の車に発信機をつけておきました。いつも通りナビと連動しますから。」

エンジンをかけながらの美千夜の言葉が終わるより早く答える影井の声を聞きながら車

に乗り込む。

「芳賀さんに伝言しとけ。どうせやらせる気なら、始めから依頼を受けといてくれってな。」

「わかりました、伝えておきます。」

という影井の変事は聞こえたかどうか?

彼はいうことだけいうと影井の返事も待たずにドアを閉めて走り去ってしまった。

 彩が連れてこられたのは都心部にしては珍しい古臭いビル街の一角にある廃ビルだった。

ビル内に連れ込まれた彼女は拘束された状態で椅子に座らされる。

「よし、このままじっとしてろ。動いたら怪我の保証はしないからな。」

リーダーらしき総髪の男がそういって彼女の近くに座る。

他は見張りにでもつく為か部屋から出て行ってしまった。

「あの…私をどうする気ですか?」

彼女の質問に彼はニコリともせずに答える。

「さて、どうなるかは俺達にもわからない。俺達のトップに聞いてみないことにはな。」

「あなた達のトップと言うのは誰なんですか?」

「知らん方がいい。知ったら後悔するぞ。」

彼女はその言葉に僅かにためらい、考えてから再び尋ねた。

「……後悔してもかまいません。教えてください。」

それを聞いた彼の口元が僅かに歪み、しかし冷静さを崩していない声で答えた。

「それなら仕方ないな。俺達のトップはお前がさっきまで会っていた男だ。」

「…そうですか…。」

沈んだ声で答える彼女に気を良くしたのか更に話を続ける。

「あの男がまずお前に会う。それから俺達がお前をここまで連れてきてお前の父親をおび

き出して殺っちまう、って筋書きだったのさ。」

彼女に更に衝撃が走るが、彼の説明は次の一瞬で打ち砕かれてしまった。

楽しそうに話を終えた彼は歪んだ口元を更に歪めて彼女を見つめる。

次の瞬間怒号のような叫びとともに彼は横に吹っ飛ばされた。

「誰が誰の仲間だ!」

美千夜の強烈な跳蹴りが彼の右こめかみに命中し、約2m左方に飛ばされる。

「たく、あること無いこと勝手に吹き込みやがる…。ああ、今の話は全部嘘だから信じる

前へ

次へ

小説TOPへ