Ray Hazardz
「美千夜さん?脅かさないで下さいよ。」
「…何かあったの?」
店長の返答を不審に思った美千夜が、少し間を置いてから尋ねる。
「そうなんですよ、今さっき強盗に押し入られまして。」
「へぇ…それは災難だったねぇ。それで、警察には連絡した?」
「ええ、丁度連絡を入れたところです。…て、美千夜さんそれどころじゃないんですよ!」
「何、どうしたの?」
警察の話をした途端、今度は慌てる店長に苦笑しながら尋ねる。
「美千夜さんがお連れになったお客様が人質にとられてしまったんです!」
「え、ホント!?」
「申し訳ありません、せっかくお連れ頂いたのにこんなことになってしまって…。」
「ああ、そんなこと別に気にしないからさ。それよりその連中の特徴とか覚えてる?」
店長はなるべく落ち着いてゆっくり特徴を話し始めた。
「はい、黒いスーツにサングラスをかけてました。それと、車で逃走したんですが車種が
黒いBMWでした。」
「黒いBMWね。ナンバーとか覚えてる?」
「はい、ナンバーは品川…。」
「わかった、サンキュ。またあの客連れてくからヨロシクね。」
「できれば別のお客様の方がよろしいのですが、今回のお詫びも兼ねて精一杯おもてなし
させていただきますとお伝え下さい。」
「はは…わかった。言っとくよ。」
美千夜は苦笑交じりの言葉を残して電話を切った。
電話を終えた美千夜はPAを懐にしまうと肩を打ち抜かれ気を失っている男達に目をや
る。
「あれだけ強気だったのにどうしてここまで簡単にやられるかねぇ。」
右手で頭を掻きながら半ば呆れ気味に呟くと彼らに背を向け、大通りに向って走り出し
た。
大通りには彼の車が置いてある。
「まさか駐車違反で持っていかれてるって事は無いよな。」
走りながらも冗談半分に独り言を口にする余裕が残っていた。
大通りの公園とLevanteとのほぼ中間地点に止めてある美千夜の愛車スカイラインGTR
(R33)の前で、1人の男性が待機していた。
彼は美千夜の姿を見つけると微笑みながら駆け寄ってきた。
一方、美千夜は少し嫌そうな顔をして、彼を迎えると話し掛けた。
「影井、何でお前がここにいる?」
「私がここにいる意味は一つしかないでしょう?芳賀さんから頼まれた仕事をやっている
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