Ray Hazardz
なよ。」
蹴りを叩き込んだときと同様に綺麗に着地した美千夜が、話しながら彩の縄を解き、かば
うように彼女の前に立ち物陰の一点を見据える。
「そこにいるのは解ってっからさっさとでて来い。」
それに応えるように美千夜の視線の先から現れた人物を見て彩は驚き、叫び声をあげる。
「お父さん!?」
「彩、その男から離れるんだ。」
「そうだな、離れた方がいい。」
姿を見せるなりそういった秀樹の言葉に美千夜が同調する。
2人はそれぞれ怪訝な表情をするが、美千夜は全てわかっているような微笑を浮かべて、
言葉を続けた。
「俺を狙ってる流れ弾に当って死なれるのは、ゴメンだからな。」
「何わけのわからんことをいっている?いいか彩、そいつは連中の仲間だ。お前を信用さ
せて後から殺す気なんだ。」
「で、そのあとこいつが生きてるように見せかけて、あんたも殺るってか?それはそれで
やってみたら面白かったかもなぁ。」
その言葉に彩は秀樹と美千夜を交互にみる。
秀樹は声も表情も真剣そのもの、対して美千夜は秀樹の話を嘲笑っているような顔をし
ておどけるように話し、そうかと思えば急に不機嫌な表情になり言葉を続ける。
「気にいらねぇ…。」
「何?」
突然表情と声を変化させた美千夜の言葉に秀樹が思わず聞き返す。
「気にいらねえっていったんだよ。俺に仕掛けた部下が失敗した挙句、おまえより先に出
てきちまったから、俺も渋谷の共犯にしてやろうってか?よくもまあそんな小賢しいこと
考えつくもんだ。」
話しながら影井から受け取った紙を取り出し、彩に見せつけるようにしながら更に続け
る。
「警察の内部告発書のコピーだ。告発者は麻薬課の新人、内容は白井秀樹による麻薬の横
流しの実体。ご丁寧にその手順まで書いてるんだぜ。」
そこまで言って再び嘲笑うかのようにいう。
「つまりお前がやっていることは、全部お見通しだったって訳だ。付け加えるならこいつ
の作成者は、こいつを提出する為に自宅を出た後、行方がわからなくなってる。」
「貴様、それを何処で…!」
「ちなみに!入手経路は企業秘密だ。」
思わず怒鳴り声を上げる秀樹の声に勝ち誇った美千夜の声が途中から重なる。
彩はもはや完全に勝った気で口元をゆがめている美千夜と、口惜しそうに歯軋りをする
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