Ray Hazardz

秀樹を順番に見てから秀樹に話し掛けた。

「…お父さん…本当なの…?」

「本当だよ、なぁ?」

信じられない…いや、信じたくないといった表情の彼女の言葉に、顔は笑ったままで威

圧するな美千夜の声が続く。

「クッ…これだけはやりたくなかったが仕方ない…。」

意を決した秀樹が懐から拳銃を取り出し、自らのこめかみに当てる。

「そんな…お父さん!」

その姿に彩がうろたえ、そう叫んでから彼に向って走り出そうとするが、美千夜の腕がそ

れを遮る。

「何するんですか、邪魔しないで下さい!」

美千夜の腕を振りほどこうと必至で力をこめる彼女を尻目に、彼は落着き払って秀樹に話

し掛けた。

「なんだ、逃げられないから自殺でもするのか?意外と潔いんだな。」

「これでも警察官なんでな。そこまでされたら責任くらいはとるさ。」

「へぇ…じゃあ目撃証言はしてやるから安心しな。」

「それは助かる。」

お互い微笑を浮かべ落ち着いた声での会話が僅かに交わされ、秀樹の言葉を最後に一瞬の

沈黙がその場を包み込む。

美千夜が思い出したように彩を解放するのと秀樹の指が動くのは殆ど同時だった。

急に力のよりどころを無くした彩が前に倒れこむのと秀樹の指が止るのは一瞬前同様殆ど

同時におきた。

フロアに銃声が響き、続いて人が倒れる音がする。

その音に被さるように彩の声にならない悲鳴が響いた。

倒れたのは美千夜、立っているのは銃をこめかみに当てたままの秀樹と悲鳴をあげた彩、

そして美千夜の右側の物陰から美千夜を撃った男の三人。

「お父さん…まさか本当だったの?」

彩の半信半疑の疑問が口からもれる。

秀樹は厭らしく口元を歪めて応えた。

「そうだな、そいつの話したことは殆ど正解だ。」

「そんな…どうして…。」

「さて、そいつの話の続きだ。少し予定が狂ったが、この計画が成功すればお前にも手伝

ってもらう気でいたから丁度いい。」

「どういうこと?」

秀樹の口元が更に歪む。

自分の計画とやらに自信があるのだろう。

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