Ray Hazardz
文が刻まれている。
美千夜は自分が銃を抜いたことを即座に後悔した。
この程度の人数ならおそらく銃を使わずとも捻じ伏せることができただろう。
銃を抜いたところでそれを使う気は全く無かった。
銃を抜く事で相手が怯み、隙が生じてくれればそれだけで一気に決着はつくはずだった。
しかし、秀樹がそれを許さなかった。
秀樹自身が自ら銃を構え、美千夜に向って発砲する。
殺気を感じ、銃口を凝視していた為裂けることに難は無かったが、それに感化された者が
一斉に発砲はじめた。
銃という武器はその弾速と間合い、そして非力なものでもうまく扱えば強力な武器とな
ることから恐れられているが、その特性を知っているものにとっては、さしたる脅威では
ない。
美千夜は自らが銃を使うが故にその特性を知り抜いていた。
様々な方向から飛んでくる銃弾でさえ、彼に傷一つつけていないことがその証明だろう。
彼自身はただ高速で不規則な動き(といっても眼で捉えるのがやっと、というほどの早さ
だが)をしているだけに過ぎなかったが、実際に引き金を引いている側はそれだけで狙い
がつけにくくなる。
何とか止ったところを狙おうとするのだが引き金を引いた瞬間、彼は既にその場所から
は消えてしまっている。
銃の扱いに慣れている数人が、何とか動きを読んで美千夜を捉えようとしたが、こちら
は例外なく美千夜に肩か腕を打ち抜かれ無力化されていった。
彼等は動いていないので狙いやすく、動きながらでも銃口の向きを変えて精密射撃を行う
ことは美千夜にとって容易だった。
「何をしている!相手はたった一人だぞ!」
秀樹の叱咤もむなしく誰一人美千夜に掠らせることも敵わず、2分後には無傷で立ってい
るのは秀樹、美千夜、彩の三人だけとなっていた。
美千夜は真顔のまま秀樹に向き直ると尋ねる。
「さて、残りはあんた一人ってワケだが…どうする?」
「ば、バカな…20人だぞ…それがこんなにあっさりと…。」
一瞬うろたえた彼は言葉を失うが次の瞬間、我を取り戻し、次の言葉を発する。
「1人も殺ら無いとは…詰めが甘いな。」
「障害は無力化すればいいだけだ。むやみやたらに排除するのは狗にだってできるから
な。」
「なかなかたいした心がけだな。だがまだ甘い。警官の俺の前でここまでやったんだ、結
果はわかってるだろうな?」
「逮捕でもしようってのかい?」
前へ
次へ
小説TOPへ