Ray Hazardz
「そこだけ思いっきり、力んで叫ぶなぁ!!!」
再び銃声、今度は足元を掠めて兆弾が天井に穴を開ける。
彼は一瞬そこで止まってから再び全速力で駆け出した。
一気に階段を1階まで駆け下り外へと向う。
外に出た彼を待っていたのは入り口を取り囲む数十人の警官隊だった。
その先頭にたっていたのは渋谷だ。
「渋谷課長…なぜここにいる?!」
驚く彼に彼は静かに継げた。
「通報があった。この建物の中で麻薬の密売が行われている、とな。まさかお前とは思っ
ても見なかったがな。」
「いや、これは…俺はその情報を掴んで連中を捕らえようと…。」
弁論を始める彼の前に静かに一枚の紙が突きつけられる。
「部下からの告発書だ。内容はお前が麻薬密売の指揮をとっているというもの。ちなみに
これはコピーだ。」
「何故それを?」
「さっき…10分ほど前だが匿名で、俺のところに届けられた。ついでにお前がここにいる
という情報も一緒にな。俺はお前が復帰するまで、伏せておくつもりだったんだが、他の
連中が騒いで、そうもいかなくなった。」
「それで課長自ら出動ですか?」
「悪いか?」
「いえ…課長まで出てきたなら大人しく捕まるしかないですね。」
「そうしてくれると助かる、多少だが罪も軽くできる。」
彼は悔しそうに苦笑しながら両手を差し出し、渋谷がそれに手錠をはめる。
それを合図に警官達が一斉に屋内へ侵入していった。
秀樹が逮捕される光景を美千夜は彩とともに窓から見下ろしていた。
「とりあえず一件落着…かな。バッドエンドだ。」
一見爽やかな微笑を浮かべて呟く彼を、彼女が半眼で見ながら質問する。
「こうなることが解ってたんですか?」
彼は始めに残念ながらと言ってから応えた。
「始めからってワケじゃない。まさかLevanteが襲撃される、なんて考えてなかった。そ
れは俺の失策だったんだろうな。」
「じゃあ何ですぐにここにこれたんですか?」
「俺たちは個人単位で動いてるんじゃない、例えばあんたが俺に会う為に仲介人を通した
ようにね。簡単に言うと彼…仲介人だけど、彼の他にもう1人調査員がいるってわけだ。
専属の探偵を雇ってると思ってくれればいい。ただし連絡係にもなるし、調査員もやるっ
ていう探偵だけどね。」
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