Ray Hazardz

「じゃあその人が私のことを調べたって言うんですか?」

「質問攻めだな…まあいいか。これは俺の推測になるんだけど、おそらくあんたの依頼が

来る直前に誰か…警察だろうけど、そこからあんたの父親に関する依頼が来てる。白井秀

樹が麻薬密売に関わっているか調査して、必要があれば始末しろってね。」

「始末って…その、殺せってことですか?」

「だけじゃないだろうけどね。今みたいに彼が偶然逃げ切って、自主させる状況に持って

いくことも、始末のうちに入る。とにかく、マスコミに嗅ぎつけられる前に、警察内部で

何とかできればよかったわけ。」

呆れ果てたように言うと最後に真顔で付け足した。

「これで質問に答えるのは最後。もう何も答えないから聞くだけ無駄だよ。」

「最後に一つだけお願いします。」

その言葉に彼は半ば呆れたものの、とりあえず話だけは聞くことにして促した。

「話してみなよ、内容次第で答えてもいい。」

「あ…有り難うございます。」

律儀に頭を下げる彼女に、彼は面倒そうに応える。

「答えるって決まったわけじゃないから、礼はまだ早いだろ?それより早く話をしなよ。

そろそろ警察が来るからさっさと引き上げたいんだ。」

「あの…父を殺さなかったのは、本当に偶然なんですか?」

それを聞いた彼が楽しそうに口元を歪めながら聞き返してきた。

「何でそう思う?」

「その、父以外の人たちは殺したわけではなくて、動けなくしてから気絶させただけでし

た。あなたは動きながらでも、正確に彼等の方や腕に当ててましたから…いくら父が走っ

てたとは言っても、あなたが当てられないとは思えないんです。それにあなたは父を外ま

で追わずに帰ってきましたし…。」

「なるほどね、そうかそうか…ククク…ハハハハハ…。」

彼女は彼が1人で納得し、突如声をあげて笑い出すのを見て、驚きながら冷汗を流した。

それに気付いた彼が笑うのを抑えて話をはじめた。

「いや、悪い。あんな状況でも、あんたが見るとこちゃんと見てたからさ。やっぱ警官の

娘だな、警官に向いてるよ。そうじゃなきゃ探偵業だな。そのどっちかになった方がいい。」

言いながらコートのポケットから煙草とライターを取り出す。

素早く煙草に火をつけてからそれを口にくわえたまま早口に言った。

「答えの代わりに見せてやるよ。」

彼は煙草を右手の人差し指と中指の間に挟むように持つと、それを軽く投げ、そのまま右

手を返しながら懐に入れ、抜き打ちに打ち抜く。

銃弾は見事に緩やかな放物線を描いていた煙草を粉砕して通り過ぎていった。

「つまりこういうこと、多分あんたなら意味がわかるだろ?」

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