Ray Hazardz
「何でそんなこと…て、まさか?!」
慌てて玄関へ向い扉を開けるとそこには笑ったまま手を振る芳賀がいた。
彼はPEの電話モードを終了してから、座りこんで額に手をやる美千夜に話し掛ける。
「なんだ、いるじゃないか。居留守はいかんぞ美千夜。」
「そうですね、今度からは相手が芳賀さんだったら、部屋の電源を消してから出ることに
しますよ。」
彼は何とか立ち上がるとそう返事をする。
「まるで、私がここに来るのを嫌がってるみたいだな。」
「思い切り簡単で直接言ってしまうと、そうなりますね。」
「たいした嫌われ様だな。」
「それより、その客って言うのは何処にいるんですか?」
「流石にここにつれてくるわけには行かないからな。近くの公園で待たせてある。」
そういうと、芳賀は先に歩き出し、美千夜が後を追った。
公園へ向って歩きながら、芳賀が話をはじめた。
「そういえば、この間の依頼の白井彩だが、彼女はうちの関連会社で働くことになった。」
「へぇ…芳賀さん自ら彼女のところに出向いたんですか?」
「いや、それは部下にやらせた。お前からの紹介、ということにしてな。事後承諾になる
が、別にかまわなかったろ?」
「ええ、一向に構いませんよ。ところで、確か彼女はまだ大学生だったはずじゃ?」
「彼女と大学の両方に話は通した。在学中の学費は会社で受け持つことになっている。そ
れと、これは彼女が知らないことだが、身元保証人は私にしてもらった。僅かだがこちら
側に関わってしまうことになったからな。」
「と、いうことは将来的には、組織に入れる気ですか?」
「場合によってはそうなるかもしれん。2〜3年様子を見て何事もなければ、我々の監視か
らはずされる。」
「成る程ね。彼女にはまた関わることになるかもしれない、ってワケですか。」
「そうなるな、ほら、その彼女が客だ。」
話が一区切りついたところで、芳賀が公園の入り口を指差す。
美千夜がその方向に目をやると、確かに入り口の柵に腰をかけて待つ彩の姿があった。
芳賀の口ぶりでは、今さっきついたような感じだったが、彼女はまるで数十分待ちぼうけ
を食らわされているような表情をしている。
それを見た美千夜が悟って芳賀に注文をつけた。
「またやりましたね。」
「何をだ?」
「この間もやったでしょう?確信犯で時間をずらして伝えるのは、やめてください。」
「以後気をつけよう。」
前へ
次へ
小説TOPへ