Ray Hazardz

「それも何回聞いたことか…。」

真顔で言う彼の言葉を全く信用せず、溜息を吐いてから彩の元へ向う。

 「またやられたらしいな。今度は何時って言われたんだ?」

軽く声をかける美千夜に気付いた彩が、恨めしげに答える。

「…1時間早く言われました。この間みたいに30分だろうって思っていたんですけど、そ

れを過ぎてもなかなか来ないから不安になってたところです。」

「そう悲観的になるなよ。中には2時間近く待たされた奴だっているんだ。」

苦笑混じりに慰める美千夜に、彩は気を取り直すと話をはじめた。

「この間は有り難うございました。助けてもらった上に、仕事まで紹介して頂いて、本当

に助かりました。」

「別に、改めて礼をいわれるようなことじゃないだろ。仕事料は別口でもらうことになっ

たし、仕事のほうはたまたま知り合いのところで手が必要だっただけだ。」

「それでも、有り難うございました。」

そういって深く頭を下げる彼女に、美千夜は戸惑いながら話題を変えた。

「その、なんだ…Levanteの店長が、この間のお詫びをしたいんだそうだが…食事がまだ

だったらどうだ?」

「ええ、よろこんで。」

彼女は笑顔でそう答え、先に歩き始めていた美千夜の後を追った。

 ちなみに、やはりLevanteの料理は彼女の口に合うものではなく、美千夜が相当偏食し

ているらしいことが判明したのは、数10分後だった。

それでもジェラートだけは、絶品であったらしいことを付け加えておく。

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