Ray Hazardz

芳賀の言葉遣いは部下に対する上司のものだが、口調はむしろ親しい友人に対している感

じを受ける。

「対して苦労してないですよ。大勢相手に派手にやるより暗殺の方が楽ですからね。」

「そうか、お前らしいな。」

美千夜の気の抜けたような率直な答えに、芳賀は笑いながらそういった。

「でも依頼主を隠して俺に仕事をさせるのは今回が最後ですよ。」

「いや、スマン。依頼主が国だとわかればお前は断るだろうからな。あえて隠させてもら

ったんだ。」

「大丈夫ですよ。芳賀さんが受けた依頼を断ったりしませんから。連中も最近はそれがわ

かってきたから芳賀さん経由で依頼を持ってきてるんですし。」

「まあそうだな。さて、せっかく仕事が終わったばかりで悪いんだが、また仕事の依頼が

きてる。」

芳賀は先ほどまでの笑い声から一転して真面目な口調に変わった。

対照的に美千夜は気の抜けたような口調のまま答えた。

「別にいいですよ。仕事が連続ではいるなんてのは良くあることですから。」

「今回の依頼人はなんと女性だ。」

「別に女性だからって珍しいことでもないでしょう。で、依頼の内容は?」

「それなんだが、あまり人に知られたく無いらしくてな。悪いが直接会って聴いてくれ。」

「解りました。芳賀さんを通しての依頼ですから最優先でやりますよ。時間と場所、それ

と依頼人の名前を教えてください。」

美千夜はそういってPEを記録モードに変更した。

 美千夜の元に依頼がきてから2日後、公園のほぼ中央にある噴水前で一人の女性が何度

も腕時計と周りを交互に見ながら立っていた。

彼女の名前は白井彩、今回美千夜に依頼をしてきた人物である。

「変ね…確かに11時にこの場所って言われたのに全然こないじゃない。ひょっとして騙さ

れたのかしら?」

先ほどからの彼女の行動の理由はそれだった。

確かに仲介人と名乗る男と連絡をとったときはこの場所に11時といわれた。

しかし、それから30分立っても美千夜は現れないのである。

「全く、何が『11時に公園の噴水前で待っていれば向こうが見つけてくれる』よ。30分も

過ぎてるのに全然こないじゃない!」

そういって彼女がその場を離れようとしたときだった。

「11時って言われたのかい?」

背中から突然声をかけられ、驚いて振り向くと美千夜が噴水の水をためている池の枠に

腰をかけて彼女を見ていた。

「おっと、自己紹介を忘れてたな。聞いてると思うが美千夜戎だ。で、11時にここって言

前へ

次へ

小説TOPへ