Ray Hazardz
われたのかい?」
「あ、はい。」
慌てて返事をした彼女を見て彼は少し考えるような仕草をしてから呟いた。
「そうか…全く、あの人もこれさえなけりゃいい人なんだけどな…。」
「えっ?」
「いや、なんでもない。こっちの話。さてと…早速仕事の話に入りたいところだけど実は
朝飯をまだ食べて無くてね。朝昼兼用でと思ってたから少し早いけど丁度いい。遅れたお
詫びも兼ねてご馳走させてもらうよ。」
美千夜はそういうと彩の返事も聞かずに歩き始めた。
彩が連れてこられたのは公園のすぐそばにあるLevanteという名のイタリアンレストラ
ンだった。
公園のすぐそば、といっても裏通りの路地を入ったところにある為人通りは全くといって
いいほどない。
美千夜は店に入るとウェイターに声をかけてから窓際の一番奥に座った。
「ここはあまり知られて無いけどいい店でね。最初にきたときに気に入ってそれから良く
使ってるから今じゃすっかり常連なんだ。」
「美千夜様は週に3回は当店に足を運んでいただいてますから、こちらでもなるべくこの
席は空けるようにしているんですよ。」
苦笑しながらいう美千夜に続けて水を運んできたウェイターが言った。
「はいはい、余計なこと言わない。俺はいつもの、彼女にはお勧めを頼むよ。」
「かしこまりました。」
美千夜は注文を受けたウェイターが厨房へ消えるのを見届けてから話を切り出した。
「さて…で、依頼の内容は?」
美千夜のペースに引きずり込まれていたのだろう。
彼女は「あっ」と小さく声をあげると急に深刻な顔になって話をはじめた。
「実は…人を殺して欲しいんです。」
「へぇ…可愛い顔して殺しなんて簡単に言うねぇ…。訳でもあるのかい?」
「実は殺して欲しいのは、私の父を殺そうとしている人なんです。」
「あんたの親父さんが狙われてるって訳か。」
「はい、その人は父の上司で渋谷仁といいます。」
「渋谷仁ねぇ…人に恨まれるような人間じゃないんだけどなぁ。」
彼女は名前を聞いてそういった美千夜を驚いたように見つめて聞いた。
「あの人を知ってるんですか?」
「ちょっとね、知り合いって訳じゃないがこういう商売やってるから情報にも詳しくない
とダメだから。表も…裏も、ね。それより何で渋谷を殺して欲しいんだい?」
「はい、実は…。」
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