Ray Hazardz

再び真剣な表情に戻った彼女はその理由を話し始めた。

 話は2日前に遡る、彼女の父親、白井秀樹が腕を負傷して病院に運ばれた。

知らせを聞いた彼女は病院へ駆けつけたが、幸いたいした怪我ではなく2週間程度で完治

するものだった。

病院には彼の上司である渋谷も駆けつけており、秀樹と話をしていた。

「お父さん!」

「心配かけたな、たいした怪我じゃないから大丈夫だ。」

乱暴に扉を開くと同時に叫んだ彩に秀樹が微笑みながら言った。

「なにいってんだ、全治2週間だぞ。白井が2週間戦線を離れるのはかなり痛いからな。」

「渋谷課長…ご迷惑おかけします。」

笑いながら言う渋谷の顔を見上げ残念そうに微笑みながら秀樹が言った。

「冗談だよ。白井が抜けて痛いのは確かだが、無理でもされて余計酷くなったらもっと困

るからな。治るまでの2週間は休暇にしておくから家でゆっくり療養してくれ。」

「ありがとうございます。」

秀樹が頭を下げたのに続いて彩が深く頭を下げた。

 その翌日、秀樹は休暇のため一日中自宅にいたがどこか落ち着きが無く何かに脅えてい

るといった様子だった。

夕方、心配した彩が意を決して尋ねてみると彼は震える声で答えた。

「俺は狙われてるんだよ…渋谷課長にな…。」

その言葉に驚き、声をあげそうになった彩の口を秀樹が抑え、小声で注意する。

「静かに!どこかで、課長の部下が聞いてるかもしれないんだぞ。」

彼女はゆっくりと頷き、今度は小声で話した。

「課長に狙われてるって何で?」

「…課長は自分の立場を利用して押収した麻薬の横流しをしていたんだ。俺はそれを見て

しまってね、そのときは気付かれてないと思ったんだがどうやら気付いてたらしい…。こ

の怪我も俺を狙った銃弾がそれたものなんだ。きっと俺が家にいる2週間の間に誰かが殺

しに来るんだろう…。」

話し終えた秀樹は力なく笑ってから口惜しそうに歯軋りをした。

そんな秀樹の姿を見て彩はどんな手段を用いてでも彼を守りたいと思った。

 美千夜は彼女の話を次々と運ばれてくる食事を口にしながら聞いていた。

話が人段落すると彼は口の中にあるものを水で流し込んでから話をはじめた。

「で、親父さんを守る為に俺に殺しを頼もうって訳か…。」

「はい…。」

その答えに美千夜はもう一度ゆっくりと水を飲むと意外な言葉を言った。

「悪いけど、その依頼は受けられないね。」

「えっ!?」

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