Ray Hazardz
を突っ込んだらどんな目にあうかわからないよ。」
言いながら彼のどこか優しげな顔がどんどん真剣になっていく。
そして最後に斬りつけるように言い放った。
「ろくな知識も無い奴が、こんなとこに足突っ込むんじゃない。」
そういうと席から立ち上がる、そしてもとの優しい顔に戻って微笑むと口を開いた。
「冷めてるけど料理だけは食べてってくれ。勘定は済ませとくから。」
彼はそれだけ言い残してテーブルから離れ、店を出て行った。
店を出た美千夜は路地を曲がって人気の無い方にどんどん進んでいく。
完全に人の気配がなくなった袋小路で立ち止まると、振り向いて誰かに話し掛けるように
口を開いた。
「…とっくにばれてんだからいい加減出てきたらどうだい?」
その声に呼び出されるかのように物陰から黒いスーツに黒いサングラスをかけた男達が
現れる。
「おっと、全身黒ずくめか…恐いねぇ。」
彼等を見た美千夜が肩をすくめながらおどけるように言う。
「ところで、人数減って無い?店を出たときには15人いただろ?」
「5人は店に置いてきた。たかが殺し屋ごときに10人でも多いくらいだがな。」
彼の質問に先頭にいる長髪の男が答え、さらに言葉を続ける。
「貴様こそ、この人数を相手にするつもりか?」
「当然、15人できてくれても別にかまわなかったんだけどな。」
その言葉が癇に障ったのか長髪の男が強い口調で切り返す。
「ほう、強気だな。それじゃあ相手をしてもらおうか!」
その言葉と同時に男達は一斉に銃を抜いたが美千夜は全く動じることなく、むしろ楽しそ
うに口元を歪める。
次の瞬間、銃声が丁度10回、連続で鳴り響いた。
彩はまだ1人で店内に残っていた。
美千夜に「食べてくれ」と言われた料理は、しっかりと皿だけにし、既にウェイターが片
付けていた。
しかし、彼女は席を立とうとせずにただ窓の外をボーと眺めていた。
昼時ではあるが少しは空席がある為だろうか、食器を片付けたウェイターも何も言わな
かった。
「はぁ…。」
食事を終えてから何回目かの溜息が漏れる。
昨日秀樹から話を聞いたあと、部屋で深夜まで考えてようやく思い立った彼を確実に救
う方法が、以前彼から聞いた美千夜という男に始末してもらおうという考え。
しかし美千夜に依頼を断られ、そしてあることに気付かされた。
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