Ray Hazardz
正直、理由を聞かれたときに以来を受けてくれる気でいると勝手に思い込んでいた。
その思い込みは一言で覆された上に、自分がいかに裏社会について無知かということを、
嫌というほど思い知らされた。
そして彼の口から斬りつけるように放たれた言葉が、頭の中をずっと廻っていた。
「ろくな知識も無い奴がこんなとこに足突っ込むんじゃない。」
実際、彼の話を聞いてる途中からナイフで切りつけられているような思いだった。
特に最後の言葉は刀で縦一文字に斬られたような気になった。
彼女は他にはこういうことを頼める人物を知らない、しかしここで途方にくれているわ
けにも行かず立ち上がって店から出ようとしたときだった。
「全員動くな!」
叫び声と銃声が殆ど同時に店内に響き渡る。
驚いて音の方向を見ると黒いスーツに黒のサングラスをかけ、銃を持った5人の男達が
入り口に立っていた。
1人がレジにいるウェイターに銃と袋を突きつけ金を要求している。
残りの4人はあたりを警戒していた。
「て、店長…。」
ウェイターはすがるような目で店長を見る。
「か、金は事務所の金庫に入っている。」
店長が震える声で搾り出すように言うと警戒していた男が袋を受け取り、銃を彼に向けた
まま近づいていく。
「これに入るだけつめろ。」
男はそういって店長に袋を渡すと銃で事務所に行くように指示し、店長と共に店の奥に
消え、2分ほどした後戻ってきたときにはいっぱいになった袋を持っていた。
「さて、用は済んだんだが警察が来ると厄介なんでな。客の誰かにいっしょにきてもらお
うか?」
戻ってきた男はそういって店内を見回し、店内で唯一1人だけだった彩に目を留めると彼
女に近づいていった。
「お前がいい、俺達と一緒にきてもらおうか。」
そういうと彼女の腕を掴み、店から出ていく。
慌てて店長が店から飛び出したときは既に車は発進していた。
「黒のBMW、ナンバーは品川…。」
彼は車種とナンバーを覚え、速やかに警察へ連絡した。
店長が警察への連絡を終え、受話器を置くのと同時に電話のベルがなった。
これは恐る恐る受話器に手を伸ばすと震え気味に応対する。
「はい、Levanteです。」
「あ、店長?美千夜だけど…。」
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